毛髪の構造と傷みの原因について
毛髪は外側から、キューティクル・コルテックス・メデュラの3層構造でできています。
ここでは毛髪で例えますが、パーマをかける際、1剤で表面のキューティクルを開かせ、中間部のコルテックス内に詰まった細胞の中にある「間充物質(2)」にパーマなどの薬剤が作用します。
間充物質(2)は、薬剤などの化学反応を受けやすく1つの細胞内の約60%を占めています。
また、コルテックス自体は髪内部の約90%を占めており、ケラチンタンパク質が主成分です。コルテックスは髪の毛の太さ、硬さ、強さにも影響します。パーマは髪内部のタンパク質を意図的に変性させることが傷みの原因になるので、コルテックス内の間充物質が減っていくと、パーマもかかりづらくなります。変性されゆがんだタンパク質は、流出しやすくなり、間充物質が減ってスカスカになった髪はさらに傷みが増していきます。
パーマをかける際「1剤で表面のキューティクルを開かせる」と記述しましたが、髪は化学物質の影響によりパーマやカラーリングをする過程で髪の毛のキューティクルが剥がれてしまうこともあり、それによって毛髪内部の必要な栄養素が流出し、ダメージ悪化に繋がります。(パーマは高いphの薬剤ほどタンパク質の流出量が増加します。)
理想的な毛髪のph(等電点)は4.5~5.5。これに対し、1剤(チオの場合)のphはおおよそ7~9。
図からも分かるように、キューティクルは髪の表面部分で、髪に艶を与えるほか、外的刺激から髪の内部を守る役割などがあります。キューティクルが損なわれると内部を保護することができなくなり、内部のタンパク質や水分が流れ出てしまいやすくなります。特に、毛先は細いため切れ毛などの原因にもなります。
ですので、内部に栄養を蓄えておくことと、外部にしっかり蓋をしておくことはとても重要です。
毛髪は「死滅細胞」で自己再生能力がないため、一度コルテックス内のタンパク質が減少したり、キューティクルが剥がれると元に戻りません。なので、一番は傷めないことが重要であるのは基本ですが、どうしても傷む施術を行う場合は「ダメージを最小限にする処理」をしておき、それでも施術によって少なからず損なわれた部分はトリートメントで補うことしか方法がないため、この工程はお客様を思っての施術であれば、本来必須なのです。
毛髪の形状の変化について ~パーマが掛かる仕組み~
リフト剤には1剤・2剤がありますが、それぞれ毛に対してどのような変化を起こすのかを理解しましょう。
1剤・・・キューティクルを開き、コルテックスまで還元剤を行き渡らせ、毛髪のシスチン結合を切る
2剤・・・1剤で切り離されたシスチン結合を再結合させる
1剤でシスチン結合を一度切るため、事前にダメージケアをしておくことも大切です。特にシスチン結合が切れた時点では最も毛髪がダメージを受けやすい状態になっていますので、この時点でのトリートメントなどのケアもとても重要になってきます。
2剤で再結合させますが、パーマの場合カールを付けて元々の形状を変えているため、全部が再結合できるわけではありません。再結合できなかったシスチンは「システイン酸」となり、毛髪内に残ります。この「システイン酸」が多ければ多いほど、毛髪の強度が下がりダメージの原因になってしまいます。
システイン酸が一度生成されてしまうと分解することはできません。その他、混合ジスルフィドも誕生させてしまします。混合ジスルフィドは酸化状態のため、2剤で酸化されても変化せず、どこにも結びつかずに単独で残ることになり、毛髪ダメージに繋がります。
また、1液のオーバータイムによるものや、強いアルカリで髪を処理してしまったことが原因となり「ランチオニン」という異常アミノ酸が生まれてしまうと、シスチン結合を形成することができなくなります。
「ランチオニン結合」は、強いアルカリで髪を処理した場合、S-S結合が化学分解されて片方のシステインが「デヒドロアラニン」というアミノ酸に変化してしまいます(もう片方のシステインはそのまま変化しません)。「デヒドロアラニン」が「システイン」と反応して「-S-結合」となり、これが「ランチオニン結合」ということになります。
1剤ではシスチン結合を切ろうとする作用が大きく働いていますが、同時に結合しようとする力も実は少し働いています。1剤がオーバータイムになると、今度は切る作用よりも結合しようとする作用の方が働き始めるのですが、本来1剤で切られたS-Sが再結合しなければならないところを、還元剤が持っているSと毛髪のSが結合してしまい「混合ジスルフィド」が誕生してしまいます。これにより毛髪の内部の強度が低下するため、カールの持ちが悪くなったり、「混合ジスルフィド」が髪に負担を与え、毛髪のダメージに繋がることとなります。
パーマは1剤の軟化具合も重要ですが、2剤で決まる部分も実は大きいのです。つい気が緩みがちですが、2剤も適切な量と放置タイムが重要になってきます。毛髪の傷みの原因になるのは1剤のイメージが強いですが、2剤も傷みに影響を及ぼします。2剤は、1剤でアルカリに傾いた毛髪を酸性に戻します。
2剤(パーマのハリ・コシを与えるブロム酸の場合を例にすると)は穏やかに作用する特徴があるので、きちんと時間を置かないと酸化不足となり、しっかり再結合されません。かと言ってオーバータイムも毛髪を痛める原因となります。2剤の残留物質によりカールにハリやコシを与えるのですが、逆に必要以上に残留させ過ぎると手触りの悪さや硬さを感じることになります。
これらのことから、ラッシュリフトを行う際には傷みを軽減するトリートメントの必要性を、お客様に目的とともに正しく説明し、おすすめすることが大切です。
ここまでパーマが掛かる仕組みについて説明してきましたが、下記記事ではラッシュリフトとまつげパーマの違いについて詳しくご紹介していますので参考にしてみてください。
ラッシュリフトとまつげパーマの違いって?を読む